木の皮から生まれた紙に、春を刷る。ゾー紙とドンホー版画
木の皮の繊維で漉く、やわらかく丈夫なゾー紙。その紙に貝殻の粉を引き、木版で色を重ねるドンホー版画。北部の村で受け継がれてきた、紙と色の物語です。
どこで生まれた?
ゾー紙(giấy dó)は、ゾーと呼ばれる木の皮からつくる手漉きの紙です。皮を煮てたたき、ほぐした繊維を水に溶かして、すくい上げては一枚ずつ紙にしていきます。繊維が長く絡み合うので、薄くても破れにくく、数百年もつともいわれます。かつては本を写したり、詩を書いたり、民間版画を刷ったりするのに欠かせない紙でした。北部バクニン省のズオンオー村がゾー紙づくりの中心地として知られますが、手漉きを続ける家は今ではごくわずかです。
そのゾー紙を使う代表が、バクニン省のドンホー村で生まれた木版画、ドンホー版画です。紙にはホタテに似た貝の殻を砕いた粉を引き、きらりとした独特の地をつくります。竹の葉を焼いた炭の黒など、自然の材料から色をつくり、色ごとに版木を替えて一色ずつ刷り重ね、最後に黒の輪郭を刷って仕上げます。描かれるのは、祈りや歴史、暮らしの場面。ネズミの嫁入りや、子豚を連れた母豚の絵が有名で、昔はテト(旧正月)に家に飾る絵として親しまれてきました。2025年には、ユネスコの「緊急に保護が必要な無形文化遺産」に記載されています。
見分け方・選び方
手刷りのドンホー版画は、光にかざすと貝殻の粉がほのかに光り、色の重なりにわずかなずれがあります。機械で印刷した安い複製も多いので、紙の質感と色の重なりをよく見てみましょう。ゾー紙は、ノートやポストカード、カレンダー、紙のアクセサリーなど今の暮らしに合う品も増えていて、気軽に手に取れます。
旅先での買い方・持ち帰り方
紙ものは湿気と折れが大敵です。版画は丸めずに平らなまま、厚紙やクリアファイルに挟んでスーツケースの背側へ。日本に帰ってから額に入れると、季節の飾りとして長く楽しめます。干支の絵を選んで、新しい年の贈りものにするのもすてきです。
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