塗っては研ぐ、その繰り返しが光になる。ベトナムの漆
つややかな黒や朱に、卵の殻や貝がきらりと光る小箱やトレイ。木の樹液を何度も塗り重ね、研ぎ出してつくるベトナムの漆、ソンマイの話です。
どこで生まれた?
ベトナム語で漆器や漆絵のことを「ソンマイ(sơn mài)」といいます。「ソン」は漆、「マイ」は研ぐという意味。名前のとおり、塗っては乾かし、研いではまた塗る、という作業をくり返して仕上げます。
もとになるのは、ウルシの仲間の木からとれる樹液で、北部のフート省が主な産地として知られています。ベトナムでは何百年も前から、この樹液を寺の装飾や大切な道具に使ってきました。1930年代になると、ハノイのインドシナ美術学校で学ぶ若い画家たちが、伝統の漆を絵の素材として取り入れ、「漆絵」という新しい表現が生まれます。卵の殻を砕いて貼ったり、貝殻や金・銀をはめ込んだりして、研ぎ出すと奥から模様が浮かび上がる技法も、この流れのなかで磨かれてきました。
南部のトゥオンビンヒエップ(旧ビンズオン、今はホーチミン市)にも漆の村があり、その技は2016年に国の無形文化遺産に認められています。北部ではハノイ近郊のハタイ村が、17世紀ごろにさかのぼる漆の村として知られます。
見分け方・選び方
ベトナムの漆には、昔ながらの天然の漆(sơn ta)と、早く乾いて色が鮮やかな工業用の塗料(sơn công nghiệp)があります。天然の漆は色が派手すぎず深みがあり、年月とともに澄んでいくといわれます。手間がかかるぶん値段は大きく違うので、気になる品は「sơn ta ですか?」と店で聞いてみましょう。卵の殻を貼った品は、ひび模様の細かさや、角まで丁寧に貼られているかを見ると、仕事の違いがわかります。
旅先での買い方・持ち帰り方
小箱やコースター、トレイは軽く、おみやげに向いています。ただ角や縁は欠けやすいので、店で包んでもらい、平らに寝かせてスーツケースへ。器として使うものは、長く水に浸けたり、食洗機や電子レンジに入れたりしないのが無難です。使い方は買うときに店で確かめておくと安心です。
この物語の品に出会える店
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